角付き多様体かもしれない

えー、「第一象限みたいな一部だけ閉じてる平面とかを表す言葉はあるのかな」という質問で瞬間的に思い付いた答えは角付き多様体なんですけど、それで合っているのか自信無いですね。そのものをぴったり表す言葉は知らないので、何かは捨象しながら回答するということになります。順を追って説明しましょう。

両端の閉じた線分は、とても良い性質を持ちます。「閉区間[a, b]上の関数が……」という感じの文章が大学1年生の微積分の講義で頻繁に出て来ますが、それは閉区間が良い性質を持っているからです。良い性質を持っているので研究対象になりやすくて、これの一般化はたくさんあります。私がよく見掛けるもので、

  • 単体。例えば、1次元なら両端の閉じた線分、2次元ならば中身の詰まった3角形、3次元なら中身の詰まった4面体、……という感じのもの。
  • 多面体。単体も、単体の張り合わせ(例えば、中身の詰まっていない3角形)も含む。
  • 有界閉集合。上の2つとは違って「真っ直ぐっぽさ」は気にしていなくて、閉区間の「端点が含まれている」「無限に遠くまでは延びていない」を受け継いでいる。
  • コンパクト空間。有界閉集合をさらに一般化した概念。

しかし、第一象限はこれではないですね。無限に遠くに行けちゃうので。

直線とか端の開いた半直線とか両端の開いた線分も、良い性質を持ちます。ラフに言えば、端が無くてどこでも平等なところが良い。その意味で、多様体はこれの一般化とも言えます。例えば、球面はどこでもその周辺だけを切り取った2次元の地図を描くことができるので2次元多様体としての構造を持ちます。なんかそういう感じのものが多様体です。第一象限は(X軸やY軸や原点を含まない意味で言っているなら該当するけど、「一部だけ閉じてる」という表現からおそらく軸や原点を含む意味で言われているので)これでもないですね。

ここまでに挙げた2つのどちらでもないもの、つまり、一方の端が閉じていて他方の端が開いている線分や、端が閉じている半直線の一般化のひとつに、境界付き多様体というものがあります。境界の無い多様体はどこでも平等だったけど、境界付き多様体は境界部分以外は平等にn次元、境界部分は(境界の点同士では平等で)(n-1)次元に1次元分の半直線が付く、という感じです(境界の無い多様体も、境界が空集合である境界付き多様体という形で、境界付き多様体のなかに含まれます)。第一象限は(おそらく原点を含む意味で言われているので)これでもないですね。

……ここまで長くなりましたけど、角付き多様体というものがあって、それがまさに第一象限(軸や原点も含む)の一般化のために作られたような概念です。各点の周囲の地図を描いたときに、k次元分は半直線になってて(n-k)次元分は直線、という地図で点ごとにkが異なっていることを許容するという感じの定義です。周囲の地図という観点で考えた場合の回答がこれですね。ただし、多様体というのは曲がっていても良いし実n次元空間に含まれているとも限らないんですけど、まあそれは仕方ないということでどうでしょうか。

えー、あとは、何をどのくらい捨象するかによってここまで述べてきたのとは異なる観点の回答もあり得ます。凸集合とか。でも、たぶんそういうのじゃないんだろうなー、と思ったので角付き多様体を私の回答といたします。

あ、第一象限みたいなのは有界でないです。